昨年より始めた岐阜の玉龍寺、宮前老師のもとでの参禅研修も7月の権僧都職研修で一段落し、英彩という僧号も頂戴しました。この研修で初めて托鉢修行を経験し、托鉢免許も交付されました。これで玉龍寺認可のもとに晴れて天下で托鉢修行をすることができます。

玉龍寺宮前老師と共に
さて禅とは無心になる全ての行を言いますが、中でも座禅はその中心となります。人間として生まれて生きる中で生半可な知恵が備わってしまったものだから様々な煩悩を抱え、煩悩から生まれる欲に走り、欲があるものだから無意味に恐れおののく。実は煩悩は人間の生半可な知恵が作り出したフィクションで、これをお釈迦様は空と喝破しました。煩悩のもととなる様々の欲を無心になって一旦全て捨てるのです。全ての欲を捨てて、いわばコンピュータをリセットするように自分を無心にするのです。無心の状態になると人がよく見えてきます。つまり自己満足(自己中心)の欲に囚われない目で人を見ることができるのです。そして今まで培った能力、経験が適切に使われ顧客満足をもたらします。こういう人は尊敬され慕われます。その結果、相手の人にとって辛いこともよかれと思われることは進言し、その苦労を乗り越える勇気を人に与えることができます。ところで無心になる修行はあるのでしょうか。あります。それが座禅なのです。お釈迦様が菩提樹の下で明けの明星を見て悟りを開かれたのも七日間の座禅の後でした。古来人は無心になる行として座禅を使いこなしてきたのです。我々もこれを使わない手はありません。一日5分間から始めてみましょう。座禅を毎日続ければ、衝き動かされる欲からもたらされるほとんどのもめ事は無くなるでしょう。無心になれば相手がよく見え理解でき、解決策が自然と浮かび上がります。問題解決の輪が広がるのです。夫婦で、親子で、教師と生徒で、経営者と従業員で1日1回座禅を共にすれば、お互いを思いやる心がが生まれほとんどのもめ事はなくなるでしょう。座禅は座布団二枚を敷いてどこでも直ぐに実行できます。是非皆様の日常の中で実践してみて下さい
座禅には半跏趺坐と結跏趺坐の2タイプがあります。@が半跏趺坐でどちらかの足を膝に乗せます。Aの結跏趺坐は両足とも膝に乗せます。結跏趺坐は慣れないと難しく足を痛めることもありますので、できる方以外は半跏趺坐とします。これも難しい場合は膝に乗せないで足を組んでもかまいません。股関節、膝関節、くるぶしの柔軟性が求められるのでストレッチングの併用が効果あります。しかし是非守らなければならないのはどの場合も両膝はぴったり下にくっつけることです。膝が浮いてはあぐらになり背骨が曲がり座禅の効果(緊張ある瞑想)ができません。腰骨と背骨は真っ直ぐ伸ばします。Bではもう少し真っ直ぐ伸ばしたいところです。座布団二枚を使いますが膝が浮くようなら腰の下に何かを入れて膝を下につけるようにします。目は自然に1m程前に落とすか、瞑ってもかまいません。時間は最初5分、膝を左右入れ替えて10分位が適当です。最終的には20分を2セットが適当でしょう。参禅では30分2セットとなります。時間は忙しい場合は朝起きて直ぐに寝床の上で枕などを下にして5分程度でかまいません。夜寝付けないときに座禅をすると快い睡眠をもたらします。重要なのは毎日座禅することです。3ヶ月経ったとき座禅による無心の効果を実感できるでしょう。
呼吸:座禅に入って直ぐに5回ほど深呼吸して、遠くのろうそくの火を吹き消すようにイメージして長く深く吐き出して下さい。緊張ある瞑想に入れます。

@半跏趺坐

A結跏趺坐

B腰骨、背骨、頭をまっすぐに。
さて修行の一方の托鉢について、小生禅修行を志してから座禅と托鉢をその修行の基本に据えたいと思っていましたので早速どこか適当なところで始めようと思案していましたが、テレビのニュースで今週末よりお盆の帰省が始まるとのこと、それでは帰省の皆様の無事を祈り心ある方よりご報謝いただけるかもしれない近くの関越道下り線三芳サービスエリアに立つことにしました。一人では心許ないので若い山中間のH君を無理矢理巻き添えにして、ついでに最近車庫からとんと出たことのない308を引っぱり出して8月8日日曜日の午後さいたま新都心を出て関越道三芳サービスエリアに向かいました。所沢インターから入ると昼過ぎなので既に渋滞は解消し直ぐにSA着。ところが何となく雲行きが怪しく辺りが暗くなってきた。雨が来るかもしれないので早々に托鉢開始する。皆さんが行き来するトイレとレストランの間で持鈴を右手、持鉢を左手にチリチリンと般若心経をお唱えしながら様子を見る。皆さん突然現れた托鉢僧にいぶかしげに視線を投げかける。怪しい者ではありません。皆さんの旅のご無事をお祈りし合わせてここでお逢いしたご縁を感じていただけるなら、なにがしかのご報謝をお願いしたいだけです。そうこうするうちにとうとう雨がザーと降り始めました。皆さん建物の中に避難して路上には誰もいなくなってしまった。これでは托鉢にならない。小生も車に戻ることにしました。

雨で人がいなくなりました。

景色の点景として様になっていませんか。
この後雨がしばらく続くようで結局三芳SAでの托鉢は数十分でお終いとなりました。成果は当然の事ながらゼロです。うむ、托鉢修行なかなか難しそうだ。しかしこれでめげずにこれからもSAに立つぞ。皆様、休日のSAにお立ち寄りの際は、もし托鉢僧認めし折にはなにがしかのご報謝をいただければ幸いです。もちろん皆様の旅のご無事を心を込めてお祈り申し上げます。ハイ。ところで寺の免許無しの托鉢はニセ坊主と言われかねません。渋谷駅や新宿駅辺りで托鉢している僧や尼僧も怪しいものです。皆様ご報謝の際は寺の看板袋か托鉢免許を持っているかを確認の上ご報謝されないと御利益がありませんぞ。

何とも珍妙な308と托鉢支度のコンビネーション
この托鉢に先立ち、先月末に家族でヨーロッパアルプスのシャモニーを訪れた際にフレジェールの峠道で美しいアルプスを背景に海外初の托鉢をしてきました。現地の人のいぶかしげな視線を浴びて、家族からももう止めてくれとの悲鳴があがり早々に墨染めの衣と網代笠を脱ぎましたが澄み切ったアルプスの峠での托鉢もなかなかのモノでした。

モンブランを背景に

まずは座禅で精神統一

玉龍寺の看板袋と共に托鉢。後ろはモンブラン。

左エギューベルトとドリュー。右グランドジョラス。
それでは皆様といつの日か托鉢でお会いできるご縁を感じつつ、
合掌
通信者: 有富 英彩